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うさみみサスペンス劇場「遺言」


良太郎 では、金庫の中にあった父さんの遺言を読むぞ。えーと、『財産は全て、次男の悪次郎のものとする』?そ、そんな馬鹿な!

悪次郎 わはははははは!気に入らねえ親父だったが、最後に最高のプレゼントを残してくれたぜ。ざまあみろ!

良太郎 貴様、いったい何やった!こんな遺言、俺は認めないぞ! 

(つづく)

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うさ子 あーあ、これじゃトラブルになって当たり前ですよね。そもそも1人だけに全部残すなんて法的にいいんですか?

弁護士 (あれっ、うさ子くんにしてはめずらしくまともなことを・・・)遺言はちゃんと法律に規定されているよ。ちなみに法律用語では「ゆいごん」じゃなくて「いごん」と読む。

うさ子 遺恨を残すことが多いですからねえ。

弁護士 ・・・・・。

    ところでさっきのドラマの例では、遺産はどうなると思う?

うさ子 遺言のとおり、次男が全部なんじゃないんですか?

弁護士 ところが遺産には遺留分という部分があって、故人の配偶者、子どもなどは通常、遺産の半分については、遺言にかかわらず法定相続の割合の金額を請求することができる。ドラマでは相続人が子ども2人だけだったから、半分の半分、つまり4分の1の金額について長男は請求できることになる。

うさ子 良太郎さん、少し救われましたねえ。

弁護士 さて、遺言を書くのに最も注意しなければいけないのは書式。遺言には決まった書式があって、それにのっとっていないと法的な効力は生じない。
 一般的には、遺言は自分で書いてどこかに保管しておくもののように思われている。自分で書くのを自筆証書遺言というんだけど、自筆証書遺言は争いになりやすい。日付、署名を書くのはもちろんのこと、内容も全部自筆で書かれてなければならない。印もなきゃいけないし、何より遺言の内容を法的問題が生じないように書くこと自体が難しいんだ。

うさ子 あ、ドラマの遺言書はワープロ打ちだったから無効です!良太郎さん、良かったですねえ。

弁護士 いちばん確実なのは公証役場というところで公証人に作成してもらう公正証書遺言という方法だ。遺言の趣旨を伝えれば(口頭でも可)、公証人が文書にして内容を証明し、原本保管までしてくれる。但し証人(相続人や遺産をもらう人は不可)や手数料が必要だ。

うさ子 弁護士は何をするんですか?ドラマではよく、弁護士が遺言を持って、生前に預かったとか言って出てきますよね。

弁護士 弁護士ができるのは、今挙げたような正しい遺言を作成するための補助・アドバイスと、あとは亡くなった後の遺言の執行だね。遺言の法的な判断、故人の財産の調査、評価、換価等は一般の人ではなかなか難しい。だから遺言執行者には弁護士や行政書士が依頼されることが多いんだ。

うさ子 ところで遺言では、相続人以外に遺産を贈ることもできるんですよね。これから遺言を書く皆さんは「うさ子に1割」の記載必須でお願いします!

弁護士 内容が不明で法的に無効になるから絶対に書かないで下さい!