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先物取引で大儲け?それとも・・・


うさ子 先生、いい話が舞い込んで来たんですよ。普段の行いがいいからでしょうね。

弁護士 うさ子君のいい話なら、儲け話かな?

うさ子 正解です!昨日、高校の先輩から電話がかかって来たんです。知らない人だったけど、でもすごくいい話だから後輩だけに教えてるって言ってました。

弁護士 ふーん。ちょっと聞かせて。

うさ子 オホン、いいですか?まず、エルニーニョ現象の影響で世界的に暖冬になるんですよ。

弁護士 ・・・もしかして、灯油の値段が下がるとか、小麦や大豆の値段が上がるとか言うんじゃない?

うさ子 あーっ、正解です!

弁護士 商品先物取引の勧誘を受けたんだね。

うさ子 はい。あれ?どうしてそんな冷たい目をしてるんですか?100万円がすぐ200万円になるっていうのに。さては私が儲けるのをねたんでますね。

弁護士 100万円が200万円になる可能性は、ゼロになる可能性と同じだと思わないかい?

うさ子 ぜ、ぜ、ゼロですか?競馬じゃあるまいし、投資でそんなに簡単にゼロになるわけないですよ!

弁護士 それが、なるんだよ。ところで、先物取引という言葉の意味はわかる?

うさ子 先物・・・えっと、物が先だから、お金は後じゃないんですか?でもお金を持ってくるように言われたし、おかしいですねえ。

弁護士 (・・・おかしいのは君だろ。)先物とは、先(未来)の物を売買するという意味。例えば3ヵ月後の大豆を買うとか。そもそも未来の物だから、売買しても物は動かない。でも、気候や景気や国際情勢など、いろいろな要因で値段は変動する。その値動きを予想して利益を得ようとするものだよ。

うさ子 まるで株みたいですね。

弁護士 うん、株とよく似ている。でも株と違うところが実は大事なんだ。
一番の違いは、投資額の20〜30倍もの商品を売買すること。例えば灯油を現物で100万円分買ったとする。1日の値動きは大きくてもせいぜい5%だから、翌日に95万円〜105万円になる。ところが先物取引では、100万円を担保として約2000万円分の灯油が買える。そうすると翌日に5%動けば1900万円〜2100万円になる。

うさ子 2100万円になれば、100万円儲かった上に担保の100万円は返ってくるから、ほら、200万円になりましたよ!

弁護士 1900万円になれば、100万円損したから、どうなる?

うさ子 あ、担保没収で、ぜ、ぜ、ぜ、ゼロですー!ひいいっ!

弁護士 何日も連続で大きく下がったりすると、ゼロどころか担保が不足して、追加のお金を払わなければならなくなる。だから先物取引が原因で財産をなくした人は多いし、自殺したり、犯罪に手を染めてしまった例も多い。
 先物取引自体を否定するわけじゃないけど、うさ子君、先物取引に投資するなら、その倍の金額はなくなってもいいくらいのつもりでいた方がいいよ。

うさ子 で、でも先輩は絶対確実だって…任せてくれればいいって…

弁護士 「確実」と言って勧誘するのは違法だし、取引を任せざるを得ないような知識・経験不足の人に取引させるのも違法。それで任せて勝手に取引されたらもちろん違法。それにうさ子君、その100万円は全財産でしょう。資金の少ない人に取引させるのも違法。

うさ子 ぎゃあああ、私、逮捕されますか?

弁護士 いや、うさ子君じゃなくて業者が違法なの。でもお客に対しこのような違法行為を働く先物取引業者は少なくないよ。

うさ子 業者はどうしてそんなことをするんですか?

弁護士 お客に売買させると手数料が入るからね。1回の売買につき、担保金の額の10%前後の手数料がかかる。例えば100万円だとどうなる?

うさ子 手数料だけで10万円ですか!私、買い物でも1回に10万円も使いませんよ!

弁護士 当然1回で済むはずはなく、何かと理由をつけて売買させる。「暴落しそうです!」とか「今、こっちの商品がチャンスです!」とか。実際、損するか得するかは株と同じでわからない。それでもし売買収支がトントンでも、10回売買すると、100万円が業者の手数料に消えることになる。必要ないのに頻繁に売買させるのも、もちろん違法だ。

うさ子 あっという間に100万円が手数料・・・違法に決まってます!

弁護士 もし先物取引で損害をこうむって、今言ったような違法行為に思い当たることがあれば、弁護士に相談してみたらいい。

うさ子 とりあえず私、先物取引はやめておきます。でもすっかり儲けた気分でいた100万円、損害になりますよね?

弁護士 なりません。