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裁判は正しければ勝つ?


うさ子 無実の人が逮捕されて裁判にかけられるという映画がやってましたよね。

弁護士 念のためおさらいしておこう。裁判には刑事裁判と民事裁判がある。犯罪をしたと疑われている人を国(検察)が訴えて刑罰を決めるのが刑事裁判。例の映画もそう。これに対し、人と人との間のもめごとについて処理・解決方法を決めるのが民事裁判だ。

うさ子 刑事にしても民事にしても、裁判になれば正しい方が勝つんですよね?

弁護士 そうだといいんだけど・・・必ずしもそうじゃないよ。裁判は一定のルールの中で法的な主張をし、証拠を出し合い、その量や内容で勝敗が決まる。

うさ子 でも、絶対に私の方が正しいんですよ?

弁護士 ふむ、それはどうやら民事の話だね。当然、本人は自分が正しいと思っているだろうけど、ほとんどの場合、相手も自分の方が正しいと思っているよ。

うさ子 でも、もし先生が事件の内容を聞いて私の方が正しいと思うなら、勝てますよね。

弁護士 残念だけどそうでもない。まず、道徳的に正しくても法的に理由がない場合がある。法律だって万能じゃないし、法の抜け穴を使うような人はどこにでもいるからね。

うさ子 私、そういうの得意です!

弁護士 (聞かなかったことにしよう。)・・・それから、事実そのものについて、あったのは間違いないけど客観的な証拠は全くないような場合だってある。

うさ子 絶対起こったんですって。私、見てましたから!

弁護士 当事者の証言だけでは証拠としては弱いんだ。それに例えば、相手は嘘の証言をしてくるかもしれないよ。

うさ子 それを見抜くのが裁判じゃないんですか?遠山の金さんだったら何でもお見通しですよ。

弁護士 裁判官は遠山の金さんじゃないよ。逆に遠山の金さんだったら困る。ドラマの遠山の金さんは間違えたりしないけど、実際には人の判断には誤りがある。だからこそ裁判には一定のルールが必要で、証拠に基づいて判断してもらうんだ。こうすることによって判断の誤りが少なくなる。判断する人が感覚で勝ち負けを決めたら、嘘をつくのがうまい人が勝つことになっちゃうよ。

うさ子 そう言われるとそうかもしれませんねぇ。

弁護士 弁護士としては依頼を受けた事件では出来る限りのことはやるよ。でも、「個人的には正しいと思うけど法的根拠や証拠がない、足りない。」という事件があるのも事実。そういうのは弁護士としてもつらい仕事だよ。

うさ子 いえいえ、くじけてもらっちゃ困ります。

弁護士 ところで、うさ子君が正しいと思ってるのはどんな事件なの?

うさ子 飼い始めたうさぎが大事な洋服を汚しちゃったんですよ。弁償しろと言ってもだんまりを決め込んで…

弁護士 そんなつらい仕事は勘弁して!