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刑事裁判って何してるの?


あらすじ
 うさ子は結婚詐欺の容疑で逮捕された。取り調べは最長20日以上にも及ぶと聞いたうさ子はすんなり自供。起訴されて裁判が始まった。・・・という想定である。

弁護士 それでは、被告人についての詐欺被告事件の審理を始めます。

うさ子 え、いきなり何ですか?

弁護士 今のは裁判官が最初に行う「開廷宣言」。刑事裁判は、左(下)の枠内に示すような流れで行う。犯罪の成否を争わない比較的軽微な事件は1回で終わるけど、複雑な事件や争う事件はだいたい1ヶ月に1回くらいの期日で何回にも分けて行う。1回で終わるときは起訴されてから2〜3ヶ月で判決となるけど、長い事件だと年単位かかることもあるよ。

うさ子 はあ・・・頑張ります。でも、ただの詐欺罪じゃなくて結婚詐欺罪ですよ!

弁護士 残念だけど結婚詐欺という犯罪はないよ。罪名は単なる詐欺罪になる。
それでは「冒頭手続」に入ろう。
まずは裁判官が、被告人本人かどうか確認するため、氏名、生年月日、本籍、住所などを尋ねる(人定質問)。

うさ子 生年月日だけは許してもらえませんか?

弁護士 ・・・次は検察官が起訴状を読む(起訴状の朗読)。起訴状にはうさ子君がどんな事実で裁判を受けるのか、その内容と何罪にあたるのかが書かれている。でもいきなり1回だけ聞いてもよくわからないから、事前に読んでおいた方がいいよ。
うさ子 だんだん被告人としての実感がわいてきました。

弁護士 それから、裁判官が被告人に黙秘権があることを伝える(黙秘権の告知)。
その後で今聞いた検察の起訴状について、被告人としてどう思っているのか尋ねられる(罪状認否)。とりあえず言いたいことがあれば言っていいんだよ。「そのとおりで間違ありません。」とか、「全面的に否認します」とか、「やったけどそれには深いワケがあったんです」とか。もちろん黙秘権があるから何も言わなくてもいいんだよ。

うさ子 ええ、深いワケがあったんです!うさぎのエサ代がかさんで・・・

弁護士 さて、刑事裁判のメインはここからの「証拠調べ」。
検察官が、被告人の経歴や今回の事件が起こった経緯や犯行の細かい状況など、証拠で証明しようとする事項を述べる(冒頭陳述)。それを前提として捜査の間に集めたり、作ったりした資料を証拠としてを調べてくれるように裁判所に請求する(証拠調べの請求)。

うさ子 えぇっ。何でも証拠になっちゃうんですか。それはまずいです!

弁護士 請求された証拠は弁護側が証拠とすることに同意しないと、原則として証拠として採用されないよ。同意しない(不同意)場合、その証拠資料を作った人や、供述調書だったら供述した本人(被害者や目撃者)の証人尋問が行われることになる。争わない事件だと普通は証拠請求に全部同意することが多いよ。争う事件が長くなるのはたくさんの人の証人尋問をしなければならないからなんだ。
争わない事件でも弁護側から情状証人を請求することもある。
 証人尋問のシーンはドラマなどでよく出てくるよね。証人は検察側と弁護側が尋ねたことに答える形で発言する。尋問では相手側が「異議あり!」って連呼するイメージがあるけど、実際にはそんなにないよ。

うさ子 異議あり!私にももっとしゃべらせて下さい!

弁護士 大丈夫。証拠調べの最後には弁護人、検察官、裁判官が被告人に対していっぱい質問してくれるよ(被告人質問)。

うさ子 被告人最大の晴れ舞台ですね。熱く照らすスポットライト。そしてフラッシュの嵐。

弁護士 ・・・法廷内は撮影禁止だよ。
 さあ、いよいよ終盤。検察官の「論告求刑」だ。検察が最終的な意見と与えてほしい刑の重さを述べる。「被告人の犯行は残忍、冷酷であり、無期懲役が相当である!」とか。

うさ子 残忍・冷酷って、結婚詐欺ですよ!だまし取ったお金も指輪もちゃんと返したし、無期懲役っていうのはあんまりです。助けて下さい。

弁護士 ・・・そういう被告人を弁護する意見を弁護人が述べる(弁論)。たとえば、被告人は反省し更生することを誓っていることとか、今後は監督してくれる人がいて再犯の可能性がないとか。
 最後に被告人が再度、言いたいことを尋ねられて裁判は結審。あとは判決を待つばかり。

うさ子 無期懲役ですかねえ。

弁護士 大丈夫!僕が弁護したんだから懲役10年以下は保証するよ。(…詐欺罪の上限が10年なんだけど。)

--------刑事裁判の手続の流れ--------
1.開廷(かいてい)宣言(せんげん)(裁)

2.冒頭(ぼうとう)手続(てつづき)

    人定(じんてい)質問(しつもん)(裁→被)

    起訴状(きそじょう)の朗読(検)

    黙秘権(もくひけん)の告知(裁→被)

    被告人・弁護人の罪状(ざいじょう)認否(にんぴ)(弁)

3.証拠(しょうこ)調(しら)べ

    冒頭(ぼうとう)陳述(ちんじゅつ)(検・弁)

    証拠調べの請求(検・弁→裁)

    証人(しょうにん)尋問(じんもん)(検・弁)

    被告人質問(検・弁・裁→被)

4.論告(ろんこく)求刑(きゅうけい)(検)

5.最終(さいしゅう)陳述(ちんじゅつ)(弁)

6.被告人の意見(いけん)陳述(ちんじゅつ)(被)

7.判決(はんけつ)(裁)

裁:裁判所
検:検察側
弁:弁護側(被告人含む)
被:被告人