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無罪ってひっくりかえるの?


うさ子 事務所の小型時刻表がなくなった件、犯人は先生ということが判明しましたよ。

弁護士 それ昨日、僕じゃないっていう結論になったじゃない。うさ子君も「まさか先生がなくすわけがないですから、きっと私がなくしちゃったんです。すみません」って。

うさ子 でも決定的な証拠が見つかったんです。よく見て下さい。ほら、先生の机の書類の山の下からちょっと見えてるのは何でしょうか。

弁護士 (ゲッ、あんなところに・・・)・・・ちょっと待って!憲法には「一事不再理」の原則がある。「何人も(中略)既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない。(39条)」つまり、一度無罪が確定したら、その後どんな証拠が見つかっても、同じ事件で再度裁判をして有罪に変えることはできないんだ。

うさ子 ええっ、そうなんですか。

弁護士 そう。だから僕はもう無罪なんだよ。

うさ子 でも先日、富山で、有罪が確定して服役までした人が改めて裁判で無罪になったというニュースをしてましたよ。

弁護士 そのケースは有罪が無罪に変わったものだから、上の原則には当てはまらないよ。「有罪判決を受けた者の利益となる、新たな証拠が発見されたとき」には、再審請求をすることが認められている(刑事訴訟法)。富山のケースでは別に真犯人が見つかったため、再審で無罪になったんだ。

うさ子 無罪が有罪にはならず、有罪は無罪になるなんて何だか変ですねえ。

弁護士 いやいや、「百人の罪人を放免するとも一人の無辜(無実)の民を罰するなかれ」という法格言もある。そう考えると何も変じゃない。

うさ子 その格言、この間見たばかりの某映画で、裁判官が言ってました!

弁護士 アメリカでは一事不再理の原則をより厳格に適用している。一審の陪審裁判で無罪評決となった場合、検察は控訴(上級の裁判所への不服申立て)できないんだ。つまり、無罪評決は下された瞬間に確定する。

うさ子 無罪判決を受けても検察官が控訴できる日本とは大違いですね。

弁護士 検察すなわち国家の力は、個人である被告人や弁護士に比べて明らかに強大だから、アメリカのシステムの方がバランスが取れているという意見もある。無罪率0.1%の日本でもこれを採用すべきなんじゃないかな。

うさ子 ところで、判決を受けた後に控訴できるのは、何日以内でしたっけ。

弁護士 14日以内。この控訴期間内に控訴がなかったら判決が確定するよ。

うさ子 時刻表の件、先生の無罪は昨日言い渡されたばかりで確定してませんから、一事不再理とは関係ないですよね。

弁護士 (ギクッ・・・)

うさ子 ここは日本ですから、控訴します!

弁護士 (・・・しまった、油断してしゃべり過ぎた!)